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黄斑上膜の手術体験記(9)手術、クライマックスです

「これから黄斑上膜がよく見えるように色をつけますね」
という声が聞こえてきて
ぶわ~っと流れ込んできたのは
青紫色の液体のようなもの

子どもの頃の色水遊びで
ふわ~っと
色がついた煙のようなものが
水の中を渦巻くように流れていった感じを思い出しました。

眼の前に
青紫色に染まったものが見えていて
そこに
あの細い棒
先がピンセットのように二股に分かれているものが
近づいていきます。

そこからです
驚くべきことが起きたのは。

ピンセットが青紫色に染まったものに近づき
その表面をつまむと
薄い膜が摘まみ上げられていくのが見えたのです!

水に浮いたオブラートを、つうっと摘まみ上げるように
細い棒の先のピンセット状のものが
薄い、薄い、透明な皮を摘まみ上げていくのです。

これ、まさか、
私、いま
自分の黄斑上膜を見ているわけ??

え? なんで? どうやって??

唖然茫然です

だって
黄斑って眼球の奥
いわば、脳に近い方にあるんですよ

それが、なぜ
眼の前のスクリーンに映っているように
見えるのでしょう??

映画館で映画を観ているよりは
ずっと近い
テレビ画面よりも近い

感覚的には
パソコン画面を見ているくらいの距離感で
目の前に
黄斑が浮かんで見えているのです。

レンズの外の世界の光景が
像を結ぶ場所が黄斑のはず

なのに、なぜ、どうやって、
私は「自分の黄斑を見ている」のでしょう??

大越先生は
私の頭上から作業しているのですから
ピンセット状の棒は
私の側から見たら
眼球の右上から入って来ているはずですが
それが
私には
左下から上へ向かって入ってくるように見える

その極小ピンセットの先が
黄斑の上の膜を摘まんで剥がしていくのが見える

あ、いま、膜の一部がちょっとだけ破れて
ピンセットから外れ
ふわっと流れていった......というところまで
鮮明に見えているのです

「......まだ、こっちに少し残っているわね」

「ああ、きれいにとれるわ」

というような
落ち着いた声が聞こえてきます。

絶対に目を動かさないように、と
言われていましたから
必死に視線を固定していましたが
細い棒が動くたびに
どうしてもそれを見てしまいそうになる

眼球を動かしたらダメだ~、と
自分に言い聞かせていました。

でも、自分の眼球の中を動いている物体を
自分の視線が追うって、どういうこと??
という思いも
頭の中でぐるぐる(^^;

痛いことは、痛いのです
でも
早く終わってくれ~と思っている一方で
私は、いま目の前(?)で展開されている
不思議な光景に見とれておりました。

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