東出昌大さんから
写真集『西から雪はやって来る』をいただきました。
写真集というものを
あまり手にとったことがなかったのですが
それでも、この写真集は
他にはないもの、という気がしました。
ぜひ、手にとって読んでください。
「見る」と「読む」が
圧倒的な塊になって迫ってきます。
私は高度成長期に東京で生まれた
ひ弱で繊細な都市の子どもですが
大人になってから
狩猟採集民と
長いこと付き合いましたから
いま殺したばかりの生き物の身体の温かさや
その内臓の匂いも知ることができました。
狩猟採集民にとっては
獲物を獲ることも
解体することも
ごく当たり前のことに過ぎなくて
井戸端で雑談しながら野菜を洗うような
なんということもない感じで
解体作業が進んでいくのですが
都会っ子の私には
まだ動きそうな
殺されたばかりのカンガルーの目や
温もりが残る鳥の身体を
見るたび
触るたびに
火花が散るように頭の中で
様々な思考の欠片が飛び跳ねました。
東出さんの写真集は
そのときの気持ちを、生々しく思い出させてくれました。
東出さんは
素の感情を言葉にするという
とてつもなく難しいことに挑戦しておられて
しかも、ときに、
うわ、こりゃすげぇ、と思う表現をされるのです。
以前、杏さんと対談したとき
『精霊の守り人』のドラマの現場
狩り穴に吊るされていた兎が
このまま捨てられるのでは可哀想だからと
東出さんが持ち帰ってきて
毛皮を剥いで、さばいて、
シチューをつくってくれて美味しかった、
という話を伺ったときも
ああ、東出さんって、
リアルにタンダなんだなぁと思いましたが
命のことを
気にせずにはいられない人であることを
感じさせてくれる写真集でした。
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■東出昌大さん写真集「西から雪はやってくる」