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松田悟志さん、海辺プロデューサーと、イベント&新年会(2)

役者さんって、すごいなぁ

と、つくづく思ったことが、もうひとつ。

それは、アクション・シーンのお話でした。

                   

イベントの中で、松田さんが

清流の中で綾瀬さんと斬り結ぶシーンの

川の水温が

なんと10~13度ぐらいで

(学校のプールの適正水温って、たしか22度ぐらいです)

氷水の中に入っているようで

痛いほど冷たかった、と言っておられました。

                     

その冷水につかって

何度も、何度も撮影するので

休憩が入るたびに

川岸に設置されていた湯船に

綾瀬さんと交互につかって身体を温めていたのだそうです。

                           

私も今回、ドラマに関わらせていただいて

初めて知ったのですが

撮影って、ものすごく時間がかかるんですね。

夜明けから深夜までかかって

15分とれたら良い方で

3分、というときもあるとのこと。

 

新年会で、すき焼き鍋を囲みながら

松田さんに、

「長時間、何度も何度も冷水につかって

水の中で死闘を演じて

風邪ひかなかった?」

と、尋ねたら、

「やあ、翌日は、38度の熱がでましたよ」

と、にこやかに答えられて、びっくり。

「え? 綾瀬さんは?」

「綾瀬さんも38度越えてるって、言ってましたね」

「それで、ふたりとも休まないの?」

「いやあ、そのくらいでは休みませんね。役者の間では、38度の熱をだせる薬があったら、みんな買うかもっていうのが、役者あるある、なんですよ~」

というのです。

なぜ、熱をだしたいのか? というと

ずる休みをするため、ではなくて、

良い演技をするために、なのだそうです。

 

どんなに頭の中で、しっかり考えて準備していても

いざ、本番! となったとたんに

入れ込み過ぎて、演技が少しだけ過剰になってしまうことがあるのだそうで

熱があると、そういう余分な力を入れない

これだ、と、思える演技ができるのだそうです。

 

それは、私にも良くわかる感覚なので

思わず、大きくうなずいてしまいました。

 

私も物語を書いているとき

高揚していると、筆が気分よく走るのですが

後で読み返すと

そういうときは、わずかに書き過ぎているんです。

過不足のない

本当に、これだ、と思う輪郭が見えたところで止めるのは

意外に難しいものです。

 

演技も執筆も表現の仕事だからでしょうか

こんなところで

通じるところがあるのだなぁと驚きました。

 

それにしても

私なら、38度も熱がでていたら

布団にもぐりこんで、ぐったりしているでしょうし

そのまま演技をするなんて

絶対無理です。

 

私の感覚では「絶対無理」と思うようなことを

役者さんは当たり前のように

要求されるのですね。

 

松田ジンさんと綾瀬バルサさんが

最初に一対一で斬り合う場面

カメラの性能が良いので

観客には薄闇の中で闘っているように見えますが

実際には

撮影を続けるうちに日が暮れ落ちてしまい

なんと、肉眼では、ふたりとも、互いが見えていなかったのだそうです。

 

竹光の槍と刀は何本も割れてぶっ飛び

ラバーも捻じ曲がるような力で打ち合うので

ジュラルミンの刃先だったら

指にあたりでもしたら、切れて飛んでしまいますよ、

と、松田さん、笑っておられましたが

いや、笑いごとじゃないです。

たとえ、ラバーであっても

目すれすれに振るわけで

一寸手元がぶれたら、大怪我につながりかねない。

 

それなのに、見えないなかでやっていた、なんて。

 

「いや、それが、意外に気持ち良かったんです」

と、松田さん。

「綾瀬さんも、槍舞ってこんな感じかも、って、後で言ってましたけど、

本当に不思議なくらい、気持ち良かったんですよ」

 

あ......それは、なんとなくわかるかも。

身体に滲み込んだ動きが

無意識に自分を動かす、あの感じは、確かに陶酔感があるかもしれません。

 

アクション・シーンは、何か月もかけて

身体に動きを沁み込ませていくのだそうです。

 

初めから松田さんと綾瀬さんが組んで稽古をするのではなくて

まずは

アクション・チームの

物凄く「その動き」に精通している

スーパー・バルサ

スーパー・ジンを

それぞれ相手にして

身体に動きを叩きこむのだそうです。

 

そして、ようやく、本番。

相手が、綾瀬さんですから

顔を傷つけたらえらいこっちゃ、と

松田さん、緊張したそうですが

綾瀬さんの運動神経は本当に見事だった、と

言っておられました。

 

私も、何度か、綾瀬さんが練習しているところなどを

拝見しましたけれど

それはもう、すごいです。

昨年、特番で

武井壮さんが挑戦して、その難度に驚いておられましたが

あんな複雑な手順を、よく覚えられるものですね。

 

私は、むか~し

古流柔術を習ったことがあるのですが

早々に、自分には武術の才能がないことを知りました。

なにしろ、教えていただく型の動きを覚えるのが

とても難しかったのです。

 

松田さんが

「一度見れば、ゆっくりなら、動きを再現できますよ」

と、言っていましたが

道場にも、本当にそういう人たちがいて、

私は彼ら/彼女らを見て

武術を学ぶのをあきらめたのでした。

 

その経験があったので

『精霊の守り人』で

チャグムがバルサに、武術の才能とはどのようなものか尋ねる場面で

「一度見たうごきを、そっくり真似できる」

と、書いたのですが

松田さんたちは

まさに、そういう才能を授かっておられるわけです。

 

才能がなければ、良い演技はできない。

でも

才能があれば、良い演技ができるわけでもない。

 

私たちが観ている映像の裏側で

ガタガタふるえながら

38度の熱をだしながら

相手が見えない闇の中ですら、ひたすらがんばる役者さんがいるのだ

と、思うと

深く、頭を下げたい気持ちになりました。

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■NHK千葉放送局「みんなとみなとのNHKちばブログ」
http://www.nhk.or.jp/chiba-blog/100/1900/

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