ドラマの新シーズン『悲しき破壊神』
始まりましたね。
原作者である私が
あまり細々とドラマの感想などを書いてしまうと
興を削ぐでしょうが
一方で、
原作者ならではの観方というのも、多分あって
それは、印象が新鮮なときにしか書けませんから
私が面白いと思ったところや
ドラマ作りの内側を垣間見て
面白かったことなどを書いてみますね。
初回のブログで
「試写を見ながら
胸に響いたことは、他にもいくつかあって
そのひとつが
シーズン1から4年後の物語であるシーズン2のバルサ、でした」
と、書きましたが、
欲深い商人たちを倒して小屋を出ていくときの
バルサの、あの虚しさをたたえた乾いた目をみたとき
私は、
「......あ、バルサになった」
と、思ったのです。
幼い男の子が、15歳の少年になる
その年月の長さを表現するために
シーズン1では
バルサは、敢えて
原作より若い女性として描かれました。
どこか不安定で無防備
己の内側にあった母性に気づいても
戸惑うことしかできないバルサをみて
原作とは違う、と思った方も
おられたでしょう。
私の場合は
シーズン1では
バルサを若くせねばならない理由を充分承知していましたから
新シーズン(シーズン2)に対する
最も大きな関心事のひとつが
綾瀬さんが
4年の年月を経たバルサをどう演じるのか、
ということでした。
ですから
冒頭のシーンを見たとき、
本当に安堵しました。
静かな喜びが胸に広がって
一話を観終わるまで、その感覚が続きました。
お気づきの方も多いと思いますが
バルサの殺陣も変わりましたね。
シーズン1では
短槍を長く使い
剣に対するリーチの長さを利用するシーンが目立ちましたが
今回は屋内での殺陣や
短剣を使うシハナ相手の殺陣で
短槍をコンパクトに、シャープに振るシーンが多いですね。
私はとくに
目をつぶって振るシーンが好きでした。
スタジオにお邪魔したとき
シハナがアスラの魂を呪術で縛ろうとしているところに
バルサが入って行って......というシーンの撮影をしていて
その裏側をじっくり見せていただいたのですが
驚いたのは
綾瀬さんたちが殺陣を演じる空間の狭さでした。
とくに天井がとても低いのです。
テレビの画面で観ている感じより
本物のセットの天井はずっと低く感じました。
その狭いセットの中で
床にマットもない状態で
黒装束のカシャル役の方々は
見事なバク転や宙返りを決めていて
すごいなぁ、特殊効果なしでも
実際に、こんなふうに身体が動いているんだ、と、驚きました。
腰を痛めることも多いと聞きましたが、そうでしょうね。
それでもあの環境で最大限の技を見せる。
プロというのは、すごいですね。
チキサを演じてくださった
福山さんの演技も
私はとても好きでした。
とくに、最後のところの
あの静かな声。
「張る」演技で目立つのではなく
「控える」演技で引き込む
そういうこともあるのだなぁと思いました。
ところで
私は現時点で4話まで観ているのですが
そのお陰で、気づいたことがありました。
これからも、つづけて観てみよう、と思った方がおられたら
ぜひ、各話ごとの演出の違いに注目してみてください。
昨年のシーズン1は
片岡敬司さんが演出を担当されましたが
新シーズンは
加藤拓さんがメインとなって
その他にも、中島由貴さんや西村武五郎さんなどが
演出される回があります。
脚本や俳優さんが同じでも
ドラマ全体を通した微妙なトーンなどが少しずつ違っていて
物語を表現することに興味がある私には
とても面白く思えました。
人は様々
感じ方も様々
それで良いのだと思います。
ドラマ『精霊の守り人』をご覧になって
ひととき
楽しんで過ごしていただけたようなら、幸せです。
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総合 毎週土曜 午後9時から9時58分