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骨折の季節と脳がみせる「現実」

老父が大腿骨転子部を骨折したもので
ここしばらく
なかなかブログを書く余裕がありません。
イベントをふたつ行って
とてもとても良いイベントだったので
その話もいずれ書こうと思っていますけれど
いまは、別の話を。

父はよく転倒するのですが
1月は後頭部を強打して脳出血
今回は大腿骨転子部骨折
救急車に乗り慣れてしまいました(笑)

幸い、大腿骨頸部ではなく転子部の骨折で
ほっとしましたが。

頸部と転子部
位置は近いのですけれど
骨の性質には違いがあって
頸部だと
身体に負担がかかる手術になることが多いようです。

若くて美しい主治医さんに
レントゲン画像を見せられた瞬間
「あ、転子部だ! 良かった!」
と、つぶやいてしまい、
「医療関係者ですか?」
と、言われて、赤面(^^;

いえいえ
老人を介護していると
老人がかかりやすい疾患に敏感になっちゃうだけでござる。

手術の説明をしてくださった麻酔医さんが
しみじみと
「この時期は骨折の季節なのかも。
今日だけで3件、大腿骨頸部骨折の手術があるのよ」
と、おっしゃっていましたが
暖かくなると
老人たちもなんとなく動きたくなって
転倒する可能性が増すのかも。
老親介護をしているお仲間のみなさま
お互い、気をつけましょうね。

とはいえ、
どんなに気をつけていても
老人の転倒って防げない
というのが実感なのですが(^^;

転子部でも
手術は必要でしたが
侵襲性の少ない手術で
とても上手くいって
さほど痛みもないようで
お医者さん、看護師さんたちに感謝感謝です。

ただ
父は入院直後から
さまざま、ふしぎなことを言い
ふしぎなことをする譫妄が始まり
手術の直後はひどくなって
点滴を引き抜いて大出血!

手術のときには必要なかった輸血を
するはめになってしまいました。

入院直後にも
骨折をして動けない状態で
しっかりと柵のある
病院のベッドに寝ているにも関わらず
柵の隙間から無理やり落ちて頭を打つという
魔訶不思議な離れ業もやってのけてくれました(^^;

毎日病院に行っているのですが
深夜にも電話で起こされたりするので
気が抜けません。

譫妄は認知症とは違い
一時的なものだそうで
父も
新聞を読んだり
普通に会話ができるかと思えば
ぼうっとして
コミュニケーションがまともにとれなくなったり
「いま」の父と「少し前」「少し後」の父が
別人のようになります。

なるべく「こちら側」にいる時間を長くしてあげようと
会話を試みるのですが
父の話を聞いていると
実に具体的な幻影を見ていて
かなり怖くて
でも
おもしろい

ベッドから落ちた晩は
目を開けると
自分が寝ているはずの病室が消えて
埃がたまった
がらんと人の気配のない病室が見えてきて
その窓の向こうに
かつて暮らした実家が見え隠れする。

猛烈な不安に襲われて
大変だ
変なところに来てしまった!
家に帰らねば、と思って
もがいていた。

と、訥々と話すのです。

うとうとと眠りながら
よく両手を宙にあげて
何かを押したり
触ったりするような仕草をします。

人にとっての「現実」は
脳が見せているものであるとするなら
父は
いくつも現れては消え
変化していく「現実」を
次々に見ているのかもしれません。

老親は、その存在のすべてで
子どもに様々なことを教えてくれるもののようです。

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